「今日は日和もいいから、市役所へ行きましょう」ということで、その日の朝の散歩は岩国市役所へ。2008年に完成した新庁舎はピッカピカ。屋上には市民が自由に散策できる庭園があるんです。
その屋上に行く途中のこと。ある男性の入居者様が、ふと、足をとめました。そこには、市議会開催の日程表。
「わしゃあ、これに行って聴いてみたいのお」。
入居者様の「やってみたい!」は、何とかして実現するのが、のんびり村のモットーです。さっそく、市議会に問い合わせてみると、誰でも傍聴できるととのことでした。
さて、市議会開催日の朝がやってきました。入居者様たちは、それぞれの“いっちょうら”をまとい、いつもよりシャキッとした顔立ちで出発。「行ってみたい!」と最初に言った男性はもちろん、女性も含めた数人が、少し緊張の面持ちで、いざ傍聴席へ。
入居者様は真剣な表情で議事を聴いていました。質問した議員と市職員とが議論を始めたときなど、興味深そうにうなずきながら…。
施設へ戻ると、他の入居者様やスタッフに、議会の様子を楽しそうに伝える姿があちこちで見受けられたのでした。
「また、行ってみたいのぉ」と、ある男性。そして、「市長さんに会って話してみたいねぇ」と、ある女性。
「よしっ、それなら」と、スタッフはまた動きました。そして、市長の忙しいスケジュールをかいくぐるようにして、市長室訪問が実現しました。
その日、市長室には入居者様10名の姿がありました。もちろん、“いっちょうら”です。岩国市長の福田さんと対面。福田さんの笑顔にみんなの緊張が一度にほぐれました。
突然だったのですが、ある男性の入居者様に「代表して挨拶を」と頼みました。すると、戸惑いながらも、立派な挨拶をされ、一同、驚いたのでした。
施設に戻れば例の報告会が始まりました。「市長さんは若くて、かっこよかったよ」と女性は大喜び。挨拶した男性は、いつの間にか背筋が伸びています。
「市議会を傍聴してみたい」という一人の声が現実となり、市長さんに会うこともできました。それは、その日を楽しく彩っただけではありませんでした。その後も、入居者様同士やスタッフとの間で、その時のことを思い出して語り合い、笑いあう。そんな日常を明るくするコミュニケーションになったのでした。

(記事/山口県東部の地域誌・くるとん/藤井)

岩国市市役所の屋上庭園を散策

岩国市議会の傍聴席にて

岩国市長を市長室へ訪ねて