631

利用者様との友情

のんびり村米川のグループホームに、この8月からパワフルな新人スタッフが仲間として加わりました。その名も「啓ちゃん」。

啓ちゃんが自己紹介に小規模に来たとき、一人の利用者様が駆け寄ってきました。

「おう、ここにきたんか!」

「ああ、はい、これからお世話になります。よろしくお願いします!」

どうも、この利用者様がのんびり村に来られる以前におられた施設で知り合っていたようです。この業界ではよくあることなのですが、ふたりはその関係だけではなかったようです。

この利用者様、以前はかなり本格的にテニスをしておられ、のんびり村でも、お昼休みに何度かお相手をさせていただいたことがあるのですが・・・どうも相手に取って不足・・・なご様子でした。

ところが、啓ちゃん。啓ちゃんもかなり本格的にテニスをしていて、なんと以前、何かの大会で対戦相手になった仲なのだとか!!??

 

それからこのふたりの熱いテニスが始まりました!お昼休みだけでなく、入浴のない日曜日の午後など、時間が許す限り打ち合いをしています。

この日は啓ちゃんが早出。16時までの勤務だったのですが、帰り際に「おう、やりましょうか!」

他のスタッフだと、3回ラリーfが続けばいい方なのですが、啓ちゃんとならいつまでも続きます。しかも、かなり本気で打たれています。今までがいかに手加減の入った物だったかが、啓ちゃんとのプレイを見てたら解ります。

まだまだ気温も高い時間帯なのですが、熱い戦いが続きます。

この利用者様は、通いで利用されており、そろそろ送迎の時間・・・「すみませ〜ん、そろそろ帰りの車がきますよ〜!!」

そう声をかけるまで、この戦いは続きました。

名残惜しそうな利用者様・・・「またやりましょう!いつでも出来ますよ!!」その言葉に納得され、ようやく帰宅の準備へ。

フロアに戻って、スポーツドリンクを飲用されているときのこの利用者様の笑顔が忘れられません。

こういう施設に入ると、これまでの生活の中での、特にこういった特殊な趣味は捨てなくてはならない事が多くあります。その事に対し、問題意識を持ち、なんとかしてあげたい、と考えるスタッフも多くいます。でも、なかなか全てをかなえていくことは難しいものです。

啓ちゃんはその事をよく理解し、この利用者様との「縁」をものすごく大切にして、自分の休み時間や、勤務時間後の自分の時間を使ってテニスをしてくれます。ただ、啓ちゃんの中には「してあげている」という意識はなく、「楽しいからやってる」というのがにじみでています。それをしっかり感じ取って下さってる利用者様。これまで私達には見せた事も無い様な笑顔で啓ちゃんと話されています。そこには、利用者様とスタッフの関係を超えた「友情」があるように思います。

先輩スタッフとしては、先を越されたようで少々悔しい想いもあるのですが、一人でも多くの利用者様に、この利用者様と同じ様な、充実した、本当に楽しめる時間を提供して行きたい、と思うと同時に、利用者様との信頼関係に限界や壁はなく、もっともっと良い関係を、多くの利用者様と築きあげて行きたいと感じました。